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武藤俊憲の「全英への道」

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  • 今日は武藤俊憲が歩く全英への道 ©JGTOimages
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  • 初優勝と初メジャー挑戦は2006年。まだ初々しいころ
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  • 2014年からミズノ勢に仲間入り(ミズノ提供)
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  • 昨年のパナソニックオープンは今平、石川、ジャズを退けV7。まだまだ若手に負けない!©JGTOimages

プロ19年目のホストプロ、42歳の武藤俊憲の耳に、今もリンクスコースから聞こえてくるのはギャラリーの大歓声だ。

初出場は、プロ6年目の2006年。同年の「マンシングウェアオープンKSBカップ」でツアー初優勝を飾り、日本予選ランキング上位の資格で、”聖地”に乗り込んだ。
「まだ、レギュラーツアーもやっと出始めで、右も左も分からない頃。そんな僕でもイギリスに行ってもいいんだよ、と言ってもらえたようが気がして」と、初めて遠出を許された子どもみたいにわくわくドキドキしながら遠征。

会場はロイヤルリバプール。初メジャーの舞台で、今も心に残る風景は、大会初日のスタートホールだ。

武藤の打順は最後の3番目だった。
最初の打者は、刻んでバンカーに入れた。
2番手はラフへ。
そして、武藤の番。
「緊張しながらドライバーを握ってフェアウェイのど真ん中」。
大観衆がドっと沸いた。早々の歓待に「鳥肌が立ちました」。惜しみのない賞賛に、当時28歳は震えた。
「ポッと出の選手にも、『おまえやるじゃないか』と。誰に対してとかではなく、良いプレーをした選手にはこんなにも拍手をしてもらえる。今まで頑張ってきたことが、評価してもらえた気がして感激したことを、いまも覚えています」。

スコットランドはゴルフ発祥の”聖地”と言われ、海沿いに広がる平地を利用したゴルフ場をリンクスコースと呼ぶ。
ゴルフの原風景には、人の心を動かすプレーをした者なら誰でも尊ぶ懐の深さを感じた。

聖地で自身初の決勝進出は、3度目の出場。ロイヤルリザムセントアンズで行われた2012年だ。
最終日を英国のリー・ウェストウッドと回った。互いにグリーンを外した2番ホール。
先に打ったウェストウッドがアプローチをチップイン。
武藤も負けていなかった。外からの第3打を入れ返した。
倍以上の大歓声が武藤を包んだ。
ウェストウッドは母国出身の英雄だが「”後から入れたオマエのほうこそスゲエな”と。拍手に込められた気持ちがすごく伝わってきた」。

どれも1993年から「ミズノオープン」で始まった”日本予選”を通過して得た、貴重な経験である。
「何度でも味わいたい」。
同大会の上位者のほかに、日本予選ランキングによる出場資格もあり、誰にでも一発勝負の大チャンスがあることが、選手たちを奮い立たせる理由だ。

特に武藤は2014年から、大会主催のミズノと使用契約を結んで以降は他の何より大切な大会のひとつと意識するようになったが、ホストプロになってからの出場権は、まだ手にしていない。
今年こそ4枚目の切符をかけて、主催試合に挑むつもりだったが中止に。
「大会を通じて貴重な経験をさせていただける機会が1年でも減ってしまうのは、非常に残念。でも、これは誰が悪いわけでもないので…」。
緊急事態の宣言中には同社でも、クラブのメンテナンスなどの作業も休止せざるをえず、プロらに不便をかけることを詫びる連絡が来た。

「初めて全英オープンに出た時、僕はまだ別メーカーを使っていたのですが、会場にはミズノのサービスカーが常駐していて、使用クラブを問わずにメンテナンスをしてもらえた。あの時もすごくよくしていただいた」。
いつも変わらぬ対応に、改めて感謝が増した。

試合がない今は、庭先で縄跳びなどの「自重運動」を取り入れるなど、工夫しながら試合再開の時を待ちわびる。
息抜きは1日1回、家族恒例のマリオカート大会。
「カメの甲羅を投げて、やったな、やられた、と熱い戦いを繰り広げている。普段はできなかった家族との暇つぶし。こういう時間もあとで必要だったと思えるように。なんとかこの危機を乗り越え、『よし、また頑張ろう』と思えるようなシーズンが早く来て欲しい」。

昨年は、41歳にして「パナソニックオープン」で、ツアー通算7勝目を飾った。「遼と、ジャズと、周吾をいっぺんにやっつけることもできた。頑張っていれば、またそんなチャンスも来ると思って頑張りたい」。
再び、聖地に戻って大歓声を浴びるプレーを。
どんな災禍に見舞われても、熱い思いを失わない。

※今週開催予定だった「ミズノオープン」の副タイトルは「全英への道」。世界最古のメジャー戦「全英オープン」の出場権をかけた今大会も、今年は中止に。試合のない週も、大会ゆかりの選手たちが気持ちだけでも聖地への道を歩みます。

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